賃貸住宅を選ぶ際、契約前に実際にその場を訪れて確認することがあります。
この行為を一般に「内見」と称しますが、その読み方についてはご存知ですか？
「内見」という不動産関連の専門用語は「ないけん」と読むのが一般的で、これは具体的には「建物内を確認する」こと、つまり「内部の視察」という意味で使われています。
しかし「ないけん」以外にも「ないみ」「うちみ」と読むこともあり、これらの読み方が誤りであるわけではありません。
実は、これらにもしっかりとした意味が存在します。
さらに、不動産の分野では「内見（ないけん）」と似た用途で「内覧（ないらん）」という語も使われますが、これら二つの言葉の間には細かなニュアンスの違いがあります。
そこで、この記事では「内見」という用語にまつわるさまざまな面白い情報を広範囲にわたってご紹介します。
内見の用語解説とその読み方
まずは、「ないみ」や「うちみ」といった読み方について掘り下げていきましょう。
不動産に直接関連はないものの、これらの読み方に関するトリビアもご紹介しますので、ご注意ください。
「ないみ」としての内見の別の意味
江戸時代、年貢の額を定める際には、幕府や領主から派遣された代官によって稲作の成果が調査されていました。
これを「検見」と言い、村の役人が公式の調査前に行う事前の収穫調査を特に「内見（ないみ）」と呼んでいたことがあります。
「うちみ」と読む場合の特別な由来
「内見」と書いて「うちみ」「ないみ」と読む場合もあり、これは特定の姓に見られる読み方です。
特に「兵庫県」や「北海道」に多い「内見」姓は、全国に約180人ほど存在するとされています。
「内覧」と「内見」の区別：同じ目的で使われるか？
ここでは、不動産の用語に焦点を当て直し「内見（ないけん）」に似た用語である「内覧（ないらん）」の使用について説明します。
「内覧」は「内見」と同じ概念を指すのか？
一般に辞典では、「内見」と「内覧」はどちらも建物を見る行為を指すと説明されています。
実際、関東や中部地方では物件の見学を「内見」と呼ぶことが多く、一方で関西地方では「内覧」との呼称が用いられる傾向にあります。
しかし、私自身はこれら二つの用語には微妙な違いがあると考えています。
その根拠の一つが「内覧会」の存在です。
「内覧会」とは何か？施主による検査や見学会としての意味
「内覧会」とは、新築の住宅やマンションが正式に引き渡される前に、購入者が施工上の問題点や欠陥を点検する機会を指します。
この用語は「施主検査」や「顧客検査」と同義で使用されることがあります。
さらに、完成したばかりの新築物件やリフォームされた物件を限定的な期間公開し、見学を許可するイベントも「内覧会」と呼ばれ「完成見学会」という名称でも知られています。
「内見」と「内覧」の主な違いは引き渡し時期にあり
そういうわけで「内覧会」が示すように「内覧」と「内見」は使用される文脈において異なります。
具体的には
- 「内見」は引き渡し”後”に行われる物件の確認。
- 「内覧」は引き渡し”前”に実施される事前確認。
という区分けがあり、この違いに基づいて両語を使い分けています。
辞書では両者の意味が同じとされているかもしれませんが、実務上では異なると考える不動産業界の人も少なくありません。
ただし、関西地方では両者を同一視する見解が多いため、地域差が影響している部分もあります。
賃貸物件の事前見学の価値が変化している？
ここまで「内見」という用語の読み方やその意味について詳しく解説してきました。
しかし、話題を賃貸物件の事前見学の実際の意義へとシフトしてみましょう。
ここで言及される内見は、賃貸契約を結ぶ前に行う物件の確認を指しますが、最近では物理的に不動産店舗を訪れずとも契約が完了できるようなシステムが整備されつつあります。
その一例が、2017年10月に導入された「ITを活用した重要事項説明」（IT重説）です。
従来は、賃貸借契約を結ぶ際には対面での重要事項の説明が必須でしたが、IT重説の導入によりウェブ経由で説明を受け、対面せずに契約が可能になりました。
これにより、実店舗を訪れることなく契約を完了させることができるようになりました。
仮想現実による内見が主流になれば従来の内見は不要に？
さらに注目すべき技術が「VRを使用した内見」です。
現在では、物理的に現地を訪れることなく、不動産店舗でVR技術を駆使して物件の内部を見ることが可能です。
不動産ポータルサイトでは「360度パノラマビュー」が一般的であり、この技術はGoogleマップのストリートビューに似たものです。
2019年11月には、アットホームがこのVR内見技術の導入を発表し先駆けとなりました。
360度パノラマビューでは室内をほぼ実際の内見のように確認できますが、視点が固定されているため見えない角度が存在してしまいます。
一方で、VR内見を利用すればユーザーが自由に視点を変えて、部屋のあらゆる角度を確認できます。
このようなVR技術の普及が進めば、実際に不動産店舗や物件を訪れることなく賃貸契約を行うことが一般的になるかもしれません。
まとめ｜不動産用語「内見」と「内覧」の進化と現代の物件見学
不動産業界において「内見」と「内覧」は物件の前後の確認作業を指す用語であり、地域によって使い分けられています。
内見は賃貸契約後、内覧は契約前の物件確認を意味し、特に内覧会では新築物件の施工ミスや不具合をチェックします。
しかし、技術の進化により物件見学の方法は大きく変わりつつあります。
ITを利用した重要事項説明やVR内見の導入により、対面せずに物件の確認や契約が可能になり、賃貸物件の見学方法は年々進化しています。
これらの技術は、不動産業界における伝統的な「内見」の意義を再考させるものであり、今後の物件選びに大きな変化をもたらすでしょう。
