多くの人々が、青函トンネルを利用して車で青森から函館への移動が可能かどうか?疑問に思っているかもしれません。
トンネルが存在する以上、車で直接行けたらどれだけ便利かと考えるのは自然なことです。
しかし、現状では車での通行は認められていません。
この点について、納得がいかないと感じる人も少なくないでしょう。
車で通行可能になれば交通の利便性が高まり、経済にも好影響をもたらすと考えられます。
しかし、複数の複雑な問題が存在します。
当記事では、青函トンネルを自動車通行不可にしている理由について詳細に説明します。
また、現在の車による移動手段や将来的な計画についても触れていきます。
青函トンネルで自動車通行が認められていない理由
青函トンネルにおいて自動車の通行を許可していない主な理由は以下の通りです。
- 事故の危険性
- 事故発生時の対応の難しさ
- 建設上の課題
- 湿度に関する問題
これらの理由を一つずつ詳しく見ていきましょう。
増加する事故の危険性
最初に直面するのは、事故のリスクの増加です。
このように長い距離があると、事故が起きる可能性は自然と高まります。
54kmもの長さのトンネルを一直線に走り続けると想像してみてください。
景色の変化がなく、長時間の単調な運転は運転手が眠気を感じる原因になり得ます。
確かに自動運転技術の発展により、将来的にはこの問題が解決される可能性があります。
しかし、今のところはまだ高リスクとされています。
事故発生時の困難な対応
事故の可能性だけでなく、発生した事故への対処が格別に難しい問題として挙げられます。
想定しましょう、青函トンネルの中心部で事故が発生し、それが火災に至った場合です。
最初の挑戦は、事故現場に至るまでのアクセスの難しさにあります。
そして、たとえ現場に到着したとしても、汚染された空気を如何にして外に出すかが次なる課題となります。
事故の規模に応じて、トンネルを封鎖する必要が出てくるでしょう。
長いトンネル故に、対応と封鎖の期間も相応に長引くことが予想されます。
それに伴う経済的な打撃も甚大なものとなる可能性があります。
これらのリスクを考慮すると、青函トンネルを自動車通行可能にすることに対する慎重な判断が理にかなっているといえるでしょう。
ただ想像するだけで恐ろしい状況ですね。
建設時の課題と行政の壁
青函トンネルが自動車通行を設計に含めなかった背後には、建設時の特定の事情があります。
青函トンネルの建設を担当したのは、当時鉄道を管理していた運輸省(現国土交通省)でした。
一方で、道路管理は建設省(現同じく国土交通省)が担っていました。
これは、部門間の隔たりによる問題の一例とも言えるでしょう。
湿度による制約
青函トンネルを自動車が通行できないもう一つの理由は、高湿度の環境です。
青函トンネル内は極めて湿度が高く、公式によれば温度は約20度、湿度は80%近くにも達します。
このため、トンネル内を走る車両はこの高湿度環境に適応できる必要があります。
国土交通省により、火災防止などの安全基準が設けられており、これに適合しない内燃機関を持つ車両はトンネル通行が認められていません。
青函トンネルを利用できない自動車のための代替ルート
青函トンネルを自動車で渡ることができない状況下で、津軽海峡をどのようにして越えるかが問題となります。
フェリーを利用して車を輸送する
津軽海峡を車で越える唯一の手段は、フェリーを利用することです。
青函フェリーでの車輸送費用は、車のサイズによって以下のように設定されています(2024年3月現在)。
車両の長さ | 基本運賃 (円) | 10~12月運賃 (円) |
---|---|---|
6m以上7m未満 | 29,580 | 36,670 |
7m以上8m未満 | 33,650 | 41,720 |
8m以上9m未満 | 37,720 | 46,770 |
9m以上10m未満 | 44,210 | 54,820 |
10m以上11m未満 | 48,730 | 60,420 |
11m以上12m未満 | 53,130 | 65,880 |
12m以上 | お問い合わせ | お問い合わせ |
10月から12月の期間は、燃料油価格変動調整金により料金が24%高く設定されています。
これらの料金は将来的に変更される可能性がありますので、最新情報は青函フェリーの公式ウェブサイトで確認してください。
これに対して、新幹線を使用した場合の青函トンネル通過時間は約25分で、時速約140kmで運行されます。
自動車で青函トンネルを走行できたらという想いは、多くの人が抱いているでしょう。
未実現に終わった自動車列車プロジェクト
かつて青函トンネルで計画されていたのは、自動車を列車に載せて運ぶ自動車列車の構想でした。
このプランではトラックやバスは対象外とされ、乗用車のみが列車に積載されることになっていました。
非常に魅力的な計画だったにもかかわらず、残念ながら実現には至りませんでした。
その背景には
- フェリーサービスへの補償問題
- 道路整備資金の問題
- 運行ダイヤの複雑化
などが挙げられます。
この構想が提案されたのは、JRの民営化前、すなわち国鉄時代にさかのぼります。
提案された当時、フェリー運営会社からは民業圧迫を理由に激しい反対がありました。
また、国鉄の経営が行き詰まっていた時期でもあったため、財政的な余裕もなく自動車列車の構想は夢のまた夢となってしまったのです。
世界最長の海底トンネル計画
中国では、大連市と煙台市を結ぶ全長123キロメートルの海底トンネルの建設が計画されており、これは青函トンネルの約2倍の長さになります。
この巨大プロジェクトが現実のものとなるかはまだ不透明ですが、実現すれば世界最長の記録を更新することになります。
このトンネルでも、自動車は列車に載せて運ぶ方式が採用される予定です。
新たな青函トンネル構想
一方、車で青函トンネルを渡りたいと望む人々に希望を与える新計画が浮上しています。
それは、第2青函トンネルプロジェクトとして知られており、車やバス、トラックが通行可能な別のトンネルを建設するというものです。
この計画については、北海道建設新聞社の記事で詳細が報じられていますが、現段階ではまだ構想のみで具体的なスケジュールや開業日は未定です。
多くの課題を乗り越える必要がありますが、実現すれば通行の利便性が向上し大きな経済効果が期待できるでしょう。
日本の底力を信じる声もあることから、未来に向けての期待は高まっています。
まとめ|青函トンネルと将来の交通構想
青函トンネルは現在、車の通行が不可能で代替手段としてフェリー利用が唯一の選択肢です。
一方、かつては乗用車を列車に載せて運ぶカートレイン構想がありましたが、諸問題により実現しませんでした。
中国では世界最長の海底トンネル建設計画が進行中で、こちらも車は列車に載せる形式を採用予定です。
希望を与える新たな提案として、第2青函トンネルプロジェクトがあり、これにより将来的には車、バス、トラックの通行が可能になるかもしれません。
これらの計画や構想は、交通の便利性向上と経済効果の期待が高まっており、日本の底力を信じる声も聞かれます。